君を愛す ただ君を……

朝、学校に登校すると、目を腫らしたしぃちゃんに抱きつかれた

「陽菜ぁ…、私、愁と別れた」

小声であたしに教えてくれたしぃちゃんは、ぎゅっとあたしの肩を抱きしめると泣きだした

「ちょ…しぃちゃん?」

あたしはしぃちゃんの肩を優しく撫でた

「場所…移動しよう。ここじゃ、ね」

あたしはそう行って、しぃちゃんと教室を出た

非常階段の重い扉を開けると、あたしたちは階段に腰を下ろした

登校したばかりのあたしは、鞄を自分の隣に置いて、コートのボタンをしっかりと上までとめた

「しぃちゃん…越智君と別れたって?」

どういうこと?

だって昨日まで、仲良く過ごしてたのに、なんで別れちゃうの?

「昨日ね。愁の部活が終わるのを待ってたでしょ? そのときに言われたの。『別れよう』って。好きな人のことが忘れられないって」

「え?」

「愁の口から、陽菜が好きだって聞いた。部活も、陽菜がマネで入ったのを知って、愁も入ったんだって」

え? 越智君の陸上部への入部って、やっぱりあたしのせい?

「陽菜と一緒に居たいって、愁が言ってた」

「あ…でも、あたしは、大ちゃんと」

「うん。愁にも、そう言ったよ? 陽菜は婚約するって。それでもいいってさ。愁は、陽菜の傍にいられれば、それだけでいいんだって話してた」

「そ…そんな」

あたしは首を横に振ると、しぃちゃんの顔を見た

しぃちゃんの瞼は赤く腫れあがっていた

きっと夜中、泣いてたんだと思う