「どんよく?」

「そう! だってさあ。陽菜は可愛いのに、彼氏を作らないんだもん。勿体ないよ」

しぃちゃんがあたしの隣に立って、あたしの腕を掴むとにこっと笑ってきた

あたしは頬の筋肉を持ち上げると、首を傾げた

「しぃ。意味が通じてないぞ。貪欲に生きることが、どうして彼氏を作らないことと結びつくんだ?」

越智君が、足を止めるとあたしたちに振り返ってきた

「人生を楽しまなくちゃってこと! もっと欲望を前に出すべき」

「そうなると…しぃは欲望を出し過ぎなんだな」

「煩い!」

越智君のわき腹に、しぃちゃんが拳を入れる

ぎりぎりのところで越智君が避けた

「涼宮なりの考えがあるんだろうから、しぃがイチイチ、口を出すことじゃないだろ」

「大きなお世話よ。陽菜はこんなに可愛いのに…」

ぎゅうっとしぃちゃんが抱きついてくる

「大きなお世話なのは、お前だろ」

「男は煩い! ねえ、陽菜は好きな人いないの?」

しぃちゃんが上目づかいで質問してきた

「…いる、よ」

あたしの言葉に、越智君の眉がぴくっと動いたように見えた

「ほんとに? 誰?」

しぃちゃんが、目を輝かせて聞いてきた

あたしは首を横に振ると、しぃちゃんの顔を見た

「内緒」

「えー。教えてよぉ」

「叶わない恋だから、いいの」

「なんでよー。陽菜は可愛いんだから、諦めちゃ駄目だよ」

だって、越智君だよ?

しぃちゃんの悲しい顔を見たくないよ