君を愛す ただ君を……

あたしは言われてみたいよ

凄いねって…凛だから、できるんだよって

いつもお兄ちゃんのあとにできるようになるあたしに…誰も凄いね…なんて言わないから

「試合中に怪我したって、『痛い』って言えないんだよ、あいつ。『天才』だからチームの責任を背負ってるし、『天才』だから観客に期待をされてる。どんなに痛くて、泣きたいときでも、それを顔に出せないんだ。怪我をしてどんなに痛くても、試合に出るし、練習もしなくちゃいけない。あいつ、何度、己に嘘をついて生きてきたんだろうなって思う…てことで、凛ちゃん、ライの右足首、湿布を貼っておいて。今日の試合で挫いてたから」

佐山さんが、あたしの肩をポンポンと叩くと、ホテルのロビーを歩いて行った

あたしは、フロントから鍵を貰うと、鞄を肩にかけてキーカードに書いてある部屋番号に視線を落とした

『天才』も大変なんだ

お兄ちゃんも大変だったのかな?

陸上をずっとやってた

短距離の選手として、才能があるって言われたよね

高校に進学するとき、陸上に力を入れいている学校からいくつかスカウトされてたけど

全部蹴って、進学校に進んだ

医学部の大学に入るために、高校を選んだ

「凛、佐山と何を話したの?」

エレベータの前で、立っていると莱斗さんがあたしの横に立った

まだジャージ姿のままだ

ロビーで、雑誌記者の人に掴まって、ずっと話してた

やっと終わったのかな?

「莱斗さんの右足に湿布を貼っておいて…だって」

「…ったく。よく見てるよなぁ」

莱斗さんが、肩をすくめた

「痛い?」

「痛いよ」

「歩ける?」

「歩いてる」

莱斗さんの返事に、あたしは「ぷっ」と噴き出した

無理とか、できないとかじゃないないんだね

やらなくちゃいけないから、やってる…ていう感じなのかな?

痛くても、歩かなければ先には進めない

足が痛いから、歩きたくないから…「誰か連れてって」という考え方じゃないんだ