君を愛す ただ君を……

バスに乗って、すぐに佐久間さんと目が合った

莱斗さんと同じジャージを着ている佐久間さんの目が、細く鋭くあたしを睨んでいた

莱斗さんはあたしの手を掴んだまま、一番後ろの席にまで進んでいった

カーテンを閉めると、椅子に座った

あたしも莱斗さんの隣に座ると、バスが静かに発進した

「あの…いいんですか? あたしが乗って…」

「あんま良くないよ」

「なら…どうして」

「帰るって言うから」

「帰ったほうが…いいじゃないですか」

「良くない」

「どうして」

莱斗さんが腕を組んで、じろっとあたしを見た

「凛が臆病だから」

「臆病で何が悪いんですか? あたしは強くなれない」

「強くなれとは言ってない。気持ちに嘘をついて欲しくない。幸せになりたいと思ってるのに、どうして幸せになろうとしないの? 目の前にある幸せに目を逸らして、偽物の世界に戻ろうとする?」

「怖いから。人が怖い。母が…怖い。反対されて、怒られるくらいなら、あたしは…」

「そうやって、自分の人生を壊すなよ。病院で見た凛の泣きそう顔が、頭に焼きついて離れない。なんで、あの子はあんな顔をしているんだろうって。嫌なら『嫌だ』と一言、口にすれば済む問題なのに」

「言えないよ」

あたしは首を横に振った

莱斗さんの手が、あたしの膝に乗った

「俺は凛に多くを望んだか?」

「え?」

「凛の生活を壊す気はない。本当に嫌なら、別れる。もう会わない。けど…凛の目は、病院の廊下で見たときと同じだ。だから別れたくない」