君を愛す ただ君を……

『ごめん…無理だよ』

あたしの口が動いた

あたし、好きな気持ちを隠さずに好きって大きな声で叫べない

お兄ちゃんみたいに、なれないよ

「戻るなよ」

さっきよりも大きな声を出す莱斗さんの言葉は、あたしの耳にかすかに聞こえた

あたしの足を後ろに一歩、二歩と動く

莱斗さんの足が一歩、二歩と前に出た

写真を撮るフラッシュがやむと、女性たちの視線があたしに向いた

無理

あたしには無理だよっ

わかって、お願い

誰かに反対されながらも、自分の気持ちを貫くなんてことはできない

そういうのは勇気のある人じゃなきゃできない

あたしには…できない

あたしは莱斗さんに背を向けると、全力で走りだした

「凛! 行くな…戻るなっ」

莱斗さんが追いかけてくるのがわかった

駄目っ、来ないで

来ちゃ駄目

追いかけたら、いけないの

バスに戻って…お願いよ

100メートル走ったのか…走ってないのか

莱斗さんに追いつかれたあたしは、背中からぎゅっと抱きしめられた

「俺んとこにいろよ」

「無理…だよ」

「枠にはまらず、俺らの形をつくろうよ」

「ライ、バスに乗れ!」

あたしと莱斗さんの横にバスが一度停車すると、ドアが開いた

ドアの向こうには、佐山さんが立っていた

「凛も一緒だよ」

莱斗さんがあたしの手首を掴むと、バスに乗り込んだ