君を愛す ただ君を……

バスの窓から見える選手たちの写メを撮ろうとしている女性たちに目がいく

つま先立ちをして、手を上に伸ばし、少しでも大きく

少しでも近くに……好きな選手の写真を撮ろうと頑張っている

好きな人に…好きだとまっすぐに表現できる女性たちが羨ましい

「そっか…お兄ちゃんが嫌いな理由がわかった」

好きな気持ちを隠さないからだ

好きなモノを、好きだとはっきり口にする

その気持ちを絶対に曲げない

誰になんと言われようと、好きなモノは好き…だから好きなモノを諦めないように努力する

あたしは違う

誰かに反対されるとわかってることは、絶対にやらない

避難されたり、批判されるのが嫌だから

反対されるくらいなら、最初から反対されないように振る舞うだけ

嫌なことも…興味のないことも、受け入れる

「お兄ちゃんが羨ましいんだ…あたし」

お兄ちゃんみたいに、好きだから『好き』と言えるそのハートが欲しかった

あたしがバスから視線を外そうとしたとき、携帯を持ってバスを降りてきた莱斗さんと目が合った

ジャージ姿の莱斗さんの目が、すごく怖かった

『ごめんね』

あたしは声には出さずに、口だけを動かして謝った

莱斗さんの眉が中央により、下唇を噛みしめて、首を左右に振った

「行くな」

小さな声で、聞こえなかったけど…なんと言ったかはわかった

莱斗さんの近くではファンの女の子たちが、写真を撮っていた

フラッシュが瞬くたびに、光で莱斗さんの表情が見えなくなる