君を愛す ただ君を……

『試合、お疲れ様でした。莱斗さんが、シュートするたびに、格好良くてすごくドキドキしました。莱斗さんの人気の高さにもびっくりです。女性たちの歓声を聞いて、莱斗さんの凄さを痛感しました。あたしは、このまま家に帰ります。莱斗さん、もうあたしたちは会わないほうがいいと思います』

送信ボタンを押した

携帯の液晶画面に、メールがひらひらと飛んでいく動画を眺めると、『送信しました』という文字が表示された

これでいい

これが、莱斗さんにとって良いことなんだと、自分の胸に言い聞かせた

あたしの気持ちは、莱斗さんにあるけど…莱斗さんの気持ちをあたしだけのモノにしちゃいけない

あたしは……莱斗さん以外の人と結婚をしているから

結婚ってなんだろう

好きってなんだろう

愛とか…恋って……今のあたしには苦痛を与えるだけね

幸せと思えるのは、一瞬だけ

まるで夢の中にいるように居心地がいい

だけど現実のむなしさを強調するだけ

あたしが孤独な人間だと、確信するだけ

莱斗さんと一緒に居たいのに、一緒にいれない現実を目の当たりにする

夫と別れる理由が生まれず、夫に別れを切り出せない弱気な自分が嫌いになる

携帯を鞄の中にねじ込むと、あたしはバスに乗り込んだであろう莱斗さんを想像した

少しだけ身体をねじって、13番ゲートの前に停まっている観光バスに目を向けた

莱斗さん、ありがとう

少しの時間だけだったけど、一緒に過ごせて嬉しかった

無意味な生活に、潤いを貰ったよ

でもさよならしなくちゃ

莱斗さんには、もっと相応しい人がいると思うから

深みにはまって、二人とも抜け出せなくなる前に…まだ関係が浅いうちに別れたほうがいいと思う