君を愛す ただ君を……

『2泊3日で、学会に出席するから』

珍しく早く帰ってきた旦那が話していた

その日の夜、部屋で愛人と電話している声が聞こえてきた

『全然、気付いてないよ! 学会だと思って、僕の旅行鞄に下着を詰め込んでた』

…てことは、愛人と旅行かぁ

あの『みーちゃん』と

あたしは自分の部屋で、雑誌を眺めながらバイト先で見た『みーちゃん』を思い出す

旦那は真面目に仕事をしているのだろうか?

みーちゃんとやらと、会ってばかりいて、首にならないでよ

首になったら、別れる理由ができる…か

それはそれで嬉しいかも

ママもきっと別れるのに納得するだろうしね

結局、あたしはママが怖いんだ

逆らうのが、嫌なんだ

嫌いだって思ってるのに、ママに怒られるのを恐れている

だから、こんなくだらない生活に我慢してる

雑誌に視線を戻すと、ページ一面に写っている莱斗さんを見つめた

大会の初日の莱斗さんが、放ったダンクシュートの写真だった

『天才バスケットプレーヤー桐沼に、海堂彰吾オーナーが絶賛。卒業後はぜひ我がチームに』

…なんていう文字が大きく写真を横切るように入っていた

大学3年生の莱斗さん…就職の心配はないのかな?

こんなふうに、引き抜きたいって人がいるなんて、凄いなあ

あたしは、スポーツ雑誌に載ってしまうような人と付き合ってるんだ…て思うと心が震えた

嬉しいとか、自慢したい…とかじゃなくて

あたしと莱斗さんの関係が公になったら、彼の将来を潰してしまうのでないかと不安になる

今なら、この関係を無かったことにできるんじゃないかって考える

考えるけど、莱斗さんと出会ってなかった頃の生活に戻る勇気があたしにはなかった