『凛、この人となら絶対に幸せになるから』

ママにそう言われて、あたしはよく知らない医者の男と入籍をした

新婚初夜から、朝帰りをした夫にあたしは怒る気すら湧かなかった

ああ…こいつも、あたしと適当な想いで結婚をしたんだってすぐにわかった

触れることもなく、毎日別々の行動する

いつ帰ってくるかわからない夫の夕食をテーブルに置く

いつ出勤するかわからない夫のために朝食と弁当をテーブルに置く

食べているのか、食べていないのか…わからない皿を洗う

使っているのか、使っていないのか…わからない家の掃除をする

意味がわからないこの生活に、終止符を打てないあたしがいる

パパは好きに生きていいって言ってくれた

ママは、まだこの男とあたしが幸せになれると信じきっている

ううん、ママにとって必要なのは男の肩書だけ

パパに愛を求めて、痛い思いをしたママだから、男に求める価値を変えた

「あ…香水」

薔薇の良い香りが、夫のワイシャツから香ってくる

明らかに女性の香水

大人の匂いがする

20歳のあたしには、夫の生きる世界は大人の世界だ

あたしは、午前中に洗濯と掃除を終えると、バイトに向かった