君を愛す ただ君を……

越智先生と愁一郎君は、特別何かを話すということはしなかった

同じ空間にいて、たまにポツリポツリと近況を報告したり、医学のことについて、越智先生に質問したり…という感じだった

しばらく会ってなかったのなら、積る話で、会話が尽きないのかと思ってたけど

父と息子って、そんなにワイワイと話をする間柄でもないのかもしれない

私は、両親が幼いころに亡くなってるから…親子がどういうものなのか、いまいちよくわからない

愁一郎君は、ご両親が離婚しているのを知っているはず

だからわざわざ帰省してきたはず…だけど、離婚のことについて、一切口にしなかった

原因とか、子どもとして気にならないのかな? なんて私のほうが気になってしまうくらいだ

「アキさんって親父と暮らしてるわけじゃないんだよね?」

愁一郎君が泊る部屋の寝具を用意していた私の背後に立つと、愁一郎君が声をかけてきた

「はい?」

私は手を止めると振り返った

「でもアキさんは、親父を好きだよね?」

「え?」

愁一郎君がにこっと笑った

「責めてるわけじゃないし、親父との関係を詮索してるわけでもないんだ。ただ、親父が寂しそうだからさ。二人がくっつけば、少しは親父の心が楽になるんじゃないかって」

愁一郎君は、優しいね

お父さん思いの凄く良いだね

私はほほ笑むと、首を横に振った

「越智先生は、奥さんを愛してます。男の人って、何だかんだ言っても、奥さんを一番大切にしてます」

「お袋を悪く言うのも酷い息子だろうけど…酷い女だよ?」

「それでも先生は愛してると思いますよ。私、一時期、夜の店で働いてて…結婚してる男性たちに囲われてた過去があります。やっぱりどの人も、奥さんが一番でした。奥さん以外の女性は、息抜きでしかないんです」

「そうかなぁ?」

愁一郎君が、畳の上に座ると、足を伸ばして天井を見上げた

「俺は……嫌だな。お袋みたいな女は、好きになれない」

「可愛いですよ。奥さん、越智先生に振りむいてもらおうと一生懸命で」