君を愛す ただ君を……

越智先生が苦しそうに眉をひそめながら、茶封筒を奥さんに渡した

奥さんはバシッと勢いよく封筒を掴むと、すぐに席を立ってスタスタと出口のほうに歩いて行った

越智先生は下唇を噛みしめると、頭を抱え込んだ

すごく悔しそうな顔をして、今にも泣き出しそうだった

私はお冷を用意すると、先生のテーブルに近づいた

「越智先生……」

私の呼びかけに先生の肩がびくっと跳ねた

視線をあげた先生が、悲痛な表情を笑顔で隠した

「アキちゃん」

私はテーブルにお水を置くと、「良かったら、どうぞ」と口を開いた

「バイト先ってここだったんだ」

「はい」

「また格好悪いところを見られちゃったな」

先生が、お冷のコップをぎゅっと掴んだ

「やっぱり駄目だった。今、妻に離婚届けを渡したよ」

先生が重苦しいため息をついた

「アキちゃん、アパートに行ってもいいかな?」

「もともと先生の隠れ家ですよ」

「あの家に、帰るのが辛いよ」

先生が水を一気に飲みほした

「先生、私…別の場所で過ごしましょうか? 24時間のマンガ喫茶とかあるし…」

先生が首を横に振った

「できれば、アキちゃんにそばに居てもらいたい」

「わかりました。バイトが終わったら、アパートに戻りますね」