愁一郎は喉を鳴らすと、背筋を伸ばして服の襟を正した

「別に…短気じゃないし。ただちょっと、気持ちが高ぶるだけなんだよ」

愁一郎が拗ねたように口を尖らせた

「ねえ、愁一郎」

「ああ?」

「あたし、愁一郎と結婚したい」

「…あ、ああ、んー」

あたしは眉間に皺を寄せると、愁一郎の顔を見つめた

「何で、歯切れの悪い返事なの?」

「俺のセリフを取るなよなぁ……親父たちときちんと話の折り合いがついたら言おうと思ってたのに」

愁一郎が、ハンドルに顔を伏せると、「はあ」とため息をついた

「先に言っちゃった」

あたしは恥ずかしさで、頬を熱くさせながら苦笑いを浮かべた

「…たく。ま、この際どっちが言っても良いけどさ」

愁一郎があたしの頭をポンポンと叩いた

高校生の頃、しぃちゃんの頭をポンポンと優しく叩いている愁一郎を見て、羨ましく思ってたなあ…なんて思い出す

「ま、とりあえず家に帰りますか!」

愁一郎が車を発進させると、実家の門をくぐった