あたしは、海東君の突っ込みが可笑しくて肩を揺らして笑い声をあげた

「なあ、涼宮…どうかにしてくれよ。この凶暴女…俺、いつかこいつに殺される」

海東君があたしの両肩を掴んで後ろに回ると、レイちゃんの視界から消えるようにあたしの背中に隠れた

「そんなに嫌なら、陽菜に慰めてもらいなよ! 陽菜は優しいから、あんたみたいな男でも酒くらいは付き合ってくれるかもよぉ~」

レイちゃんがべぇっと舌を出した途端に、ナースステーションのカウンターがバンっと大きな音をたてた

あたしは驚いて横を向くと、越智先生が怖い顔をして立っていた

「なんでここにセンターの看護師がいるんだ?」

あたしの後ろにいる海東君を、越智先生が睨んでいた

海東君がパッとあたしの肩から手を離すと、あたしにファイルと手紙を渡してきた

「涼宮にこれを渡そうと思って、ついつい話が盛り上がっちまった」

海東君がニヤッと意味ありげに笑うと、わざと手紙をファイルの上に乗せた

「ファイルは、今朝の患者のカルテな。んで、こっちの手紙は…読んでからのお楽しみっつうことで!」

海東君が、あたしが受け取ると手紙をポンっと叩いた

「んじゃ、またあとで」

海東君があたしの耳元で囁くと、越智先生をちらっと横目で見てからナースステーションを出て行った

海東君、悪ノリしすぎだから!

あたしは心の中で突っ込みを入れた

「涼宮主任、このカルテを仕舞っておいて。それと午後の回診するカルテの用意を」

「は…はい」

カウンターにどさっとカルテを置くと、越智先生があたしを睨むように見た

「愁一郎さん……」

か細い声が、近くですると、越智先生が振り返った

「あ、ああ、椎名さん」

「お弁当を持って来たんですけど……」

「もう少し待ってていただけますか? まだ仕事が残ってますので」

越智先生はそう言うと、第一外科の医務室に入って行った