「あのぉ……愁一郎さん、いますか?」

小柄で思わず守りたくなるような風貌の女性が、か細い声でナースステーションに訪ねてきた

「そこら辺にいるんじゃないのぉ?」

レイちゃんが興味のなさそうに、適当に手を振りながら答えた

「ちょっと…レイちゃんっ!」

あたしは苦笑しながら、不機嫌な態度を崩さないレイちゃんの肩を叩いた

「これ、看護師の皆さんでどうぞ…」

女性が紙袋に入っているちょっと高そうなお菓子を差し出てきた

「はいはい、どうも」

レイちゃんは紙袋の取っ手を掴むと、ぽいっと粗雑にテーブルに投げる

「いつもご丁寧にありがとうございます」

あたしは小柄な女性に頭を下げると、レイちゃんが投げた紙袋の向きを少し変えた

「越智先生なら、もう少しで外来から戻られると思いますよ。そこのソファに座って待っててください」

あたしはナースステーションの前にある長椅子をさした

「あ…はい」

女性は大きな鞄を肩にかけ直すと、ソファのほうに歩き出した

「何なのよ、あの見合い女! 毎日毎日、弁当を持って来ちゃって。うざっ」

レイちゃんが、鼻に皺を寄せると、嫌そうな顔をする

「屋上で、二人仲良く食べてるみたいだよ」

「さらにうざっ。ワタシは家庭的な女ですよぉ~ってアピってるつもり? 仕事もせずに、男の尻を追っかけてるただの尻軽女じゃん」

レイちゃんがべぇっと舌を出すと、「嫌だ嫌だ」と呟いた