ふと視線を感じて振り返ると、制服姿のしぃちゃんがこっちを見ていた

校庭と校舎の境目にあるフェンスに立って、あたしをじっと見ていた

あたしと目が合ったしぃちゃんがぷいっと横を向く

「あ…しぃちゃん」

あたしは立ち上がると、しぃちゃんの近くに歩き出した

「しいちゃん、あのね」

フェンスの向こう側にいるしぃちゃんに声をかける

しいちゃんに近づいて気付いた

しいちゃんの目が赤くて、頬が濡れているのに

え? しぃちゃん、泣いてたの?

どうして? なんで?

フェンスに手をかけたしぃっちゃんが、顔を下に向けた

「ずっとそうじゃないかな?って思ってた」

しぃちゃんがぼそっと口を開いた

え? 何を言ってるの?

「しいちゃん?」

「昨日、言ったでしょ? 無理やり付き合ってもらったって。去年の2学期始めからクリスマスまでの間にね…私、愁に4回も告白してるの。ずっと好きな人がいるからって振られ続けてて、去年のクリスマス前に、恋人がいないなら付き合うだけ、付き合ってみてよ…って言ったの。他に好きな人がいても、私は平気だからって」

がしゃっとフェンスを掴んでいるしぃちゃんの手に力が入った

「なんとなくわかってたんだよね。2年生になって、陽菜と仲良くなってから…愁の視線はいつも陽菜に向いてるって。でも信じたくなくて、付き合ってるのは私だし。今、愁の隣にいるは私だからって言い聞かせてた。けど、やっぱ無理そうな気がした」

「どうして? 今も越智君の隣にいるのはしぃちゃんだよ?」

「でも…陽菜も好きでしょ? 愁を…」

「え?」

胸の奥がツキンと痛くなった

しぃちゃんも苦しんでる

二人は好き同士で付き合ってるとおもったから、しぃちゃんの苦しみに気づけなかった

どうしたらいいんだろう

「あのね…あたし、1年生のときに越智君を振ってるの。だから…えっと」

あたしは唇を噛みしめた