こんなに暗くなるまで、部活ってするんだあ…

あたしは校庭のライトが点灯すると、空を見上げた

空は真っ暗だ

ライトのせいで、全然星が見えないけど、運動部ってこんなにすごく大変な部活だなんて知らなかった

「これ、差し入れ」

越智君の声がするとおもうなり、頬がきゅうに熱くなった

「え?」

ベンチに座っているあたしに、ランニングを終えた越智君がホットココアを買ってきてくれたみたいだった

「あ…ありがと」

「走ってるときに自販機があったから」

越智君がそう言いながら、ジャージの上着を脱いでまたあたしの身体にかけてくれた

ジャージ内に残っていた越智君の体温が、あたしの冷えてきた身体を温めた

まるでホッカイロみたい

「走ったら、暑くなったから。持ってて」

越智君がにっこりと笑うと、大股で歩き始めた

「越智愁一郎! サボるな」

校庭にいる大ちゃんが、大きな声で怒鳴った

越智君…もしかして、知っちゃったのかな?

あたしが心臓病で、残り少ない生涯だって…

もう少し一緒に居たいって言ったのを聞いて、部活に入ったの?

同情してくれたの?

可哀想だって思った?

短い命なら、少しくらいあたしの想いを優先してあげようって気にでもなったのかな?

「優しい行動も、時には酷だよ」

あたしはホットココアの缶を握りしめた

「でも嬉しい」