「ねえ、愁一郎。もしあたしが妊娠してたら、どうする?」

「え?」

愁一郎の声が低くなった

「妊娠したの?」

「ううん。生理が遅れてたから、ちょっと不安になって調べたの。陰性だったから、平気」

なんで…嘘をついちゃうのよ、あたし!

ポケットの中に入ってる検査薬をぎゅっと握りしめた

言えない

だって、今の愁一郎の顔、すごく怖かった

妊娠したなんて言ったら、きっともっと怒るよね?

「不安になるなんて、おかしいよね。だって、愁一郎…ちゃんと避妊してくれてるのに」

愁一郎が、あたしの手をぎゅっと握ってきた

「本当に、妊娠してなかったんだな?」

「うん。今、調べたから」

「じゃあ、見せて」

「な…んで? だって、妊娠してないんだから、いいじゃない」

愁一郎の顔が、すごく怖かった

怒ってるわけじゃないんだろうけど、何を考えているのかわからなくて、あたしの不安が大きくなる

「陽菜の様子が明らかにおかしいから。本当は妊娠してるんじゃないの? このまま産科に連れて行かれたくないなら、検査薬の結果を見せて」

あたしはゆっくりと検査薬を見せた

愁一郎は手に持つと、結果の部分をじっと見つめたまま、下唇を噛みしめた

苦しそうな表情が、一瞬にして笑顔に変わると愁一郎があたしの頭を撫でた

「足腰冷やすなよ」

え?

あたしは驚いて、愁一郎の目を見つめた

「仕事の合間を見て、ちゃんと産科に行けよ」

愁一郎はそれだけ言うと、大股で歩いて行ってしまった