大ちゃんが亡くなって5カ月の時が過ぎた

軽部先生……ううん、彩香さんの赤ちゃんは8カ月になり、お腹の中で毎日、大暴れしているらしい

性別は女の子だと、言っていた

大ちゃんが購入したマンションの部屋には、日々生まれてくる子供グッズが増えていく

「ベビーベッドはいらないって、大樹のお母さんには言ったんだけど。せっかくだからって」

居間の片隅に置いてあるブラウンのベビーベッドを見ながら、彩香さんがキッチンで困った表情をした

「たったひとりの孫だから…可愛いんですよっ」

あたしは彩香さんに苦笑した

大ちゃんには兄弟はいない

一人っこだった

その大事な一人息子が死に…その子供が今は彩香さんのお腹にいるとわかれば、いろいろと買いたくなる気持ちもわかる

「ちなみに…あたしも服を買っちゃいました」

あたしは鞄の中からブランド物の赤ちゃんの服を出した

まだ袋に入ったままのプレゼント彩香さんに見せると、彩香さんが眉尻をさげた

「もうっ…そういうお金は、自分の子にとっておきなって言ったじゃない」

「あ…う、んぅー。まあ、そうなんですけど、愁一郎にその気はないみたいで」

あたしは首を後ろをかきながら、苦笑いを浮かべた

「なんで? 来月には式をあげるんでしょ?」

「え…っとまあ、そうなんですけど」

どう説明したらいいのかわからなくて、あたしは首を傾げた

愁一郎に、子供を作る気持ちは全くない

きっとあたしの身体に負担がかかるのを知っているからだと思う

いくら手術をして、普通の人とかわらない生活を送れるようになったといっても、不安が残るのだろう