君を愛す ただ君を……

私は人一倍、努力をして、優秀な成績を残して大学を卒業したのよ

医者になるために

父を見返すために

金を持っている男はみんな若い女に走って、家庭を捨てるのよ

金がなくても若い女に走ってるヤツもいるけど…

大樹を思い出すと、イラッとする

足に嫌な感触が走った

は?

私は下を見ると、教授の爪がストッキングに引っ掛かり、伝線していた

「ちょ……」

待ってよぉ

今日に限って、替えのストッキングを持ってないのに

素足でハイヒールを履くと、かかとにマメができるのよね

だからって見事な伝線をしたストッキングをはいているなんて、格好悪いし

「お手洗い行ってきます」

私は教授から離れると、鞄を持って店のトイレの中に入った

「もうっ。信じらんない。替えのストッキングがないのに、なんてことをしてくれるのよ。セクハラで訴えてやる。最低っ。だから酔っぱらいは嫌いなのよ。もう絶対に、教授の飲み会には行かない! 誘われても断ってやる」

支離滅裂なのはわかっているけど、苛々を言葉にして吐き出さないと気がすまなかった

「何が一度、寝てみたかったよ。眠いならさっさとオウチに帰って、布団に包まって一人寂しく寝なさいよっていうのよ。はあ…もう、気持ち悪いっ」

私は洗面所に両手をかけると、足を折り曲げて身体を小さくした

もう…最低っ

大樹が若い女の子を楽しそうにしているだけで、胸やけを起こしそうなくらい苛々しているのに

追い打ちをかけるように、教授に痴漢されるなんて

「久々に、飲みすぎたかも」