君を愛す ただ君を……

私はまたいつも通りの生活に戻った

日勤と夜勤の入り混じるシフト制の仕事をこなし、その合間合間に知り合った男とホテルに行く

岡崎さんほど、満たされたエッチをしてくれる男はいないけど…ひどく身体が乾くというような症状は消えた

『また岡崎さんですかぁ? もうっ、今日はどこを怪我したんですぅ?』

看護師の甘ったるい声に、私はびっくりして足をとめた

お…岡崎? ってあの岡崎さん?

青い色の手術着の上に白衣を着ている私は思わず、カーテンの中で処置をしている二人に聞き耳を立てた

『生徒が花瓶を割っちゃってね。近くにいた僕の腕に破片が飛んできて。結構、深くまで入っちゃったから。驚いた保険医が救急車を呼んだんだ。そんなに酷くないのにねえ』

『酷いですよ! 神経が傷ついてたらどうするんですかっ』

『それは困るかも。僕って陸上しか取り柄がないから……』

『もう少ししっかりしてくださいよぉ。今、先生を呼んできますから…って、その前にアドレス交換しません?』

看護師の甘い猫なで声で、岡崎さんにすり寄る音が聞こえた

まあ、気持ちはわかるわ

見た目は確かに良い男だもん

優しいし、広い心を持ち合わせていて、甘えさせてくれそう

私は、白衣のポケットに両手を突っ込むとその場から離れようと足を前に出した

『交換しません! 腕、痛いんで先生を呼んでください…って、今日は軽部先生っているんですか?』

『は? 軽部ですか?』

え? 私? …ていうか、その場の雰囲気にダラダラとつい流されちゃう男かと思ってたのに…あっさりとアドレス交換を拒否してた

なんか…意外なんだけど

『できれば、軽部先生に治療してもらいたいなあって』

『あの女医の…軽部でいいんですか?』

『うん。男の先生もいるの?』

『あ…いえ、いませんけど。なんか意外で。呼んできますね…て、あっ…もう、時間外かも…』

看護師が言葉を切ると…カーテンに移っている影が移動した