『越智が、新任教師に苛められるなんてなあ』
『ありゃ、越智が可哀想だ』
『きっとまだ校庭でひぃひぃ言ってるぜ?』

昼休みに食堂でパンを買っていたあたしの耳に、越智君のクラスメートの人たちの声が聞こえた

え?

越智君が?

大ちゃんに?

あたしはパンを2つ持ったまま、下駄箱に向かうと、靴を履いて校庭に向かった

朝礼台の近くで、大ちゃんがベンチに座っているのが見えた

越智君は?

あたしは視線を動かすと、大ちゃんの足元でぐったりと倒れこんでいた

ちょ…大ちゃん、越智君に何をしたのよ

「大ちゃん!」

あたしは近くまでくると、買ったばかりのパンを一つ、大ちゃんに向けて投げつけた

「あ、陽菜。僕に差し入れ?」

「違う! そのパンは放課後にしぃちゃんと一緒に食べるおやつ」

「え? おやつにパン?」

大ちゃんは目を丸くして、手の中にあるパンを見つめた

「それより、これどういうこと?」

「うーん、ちょっとね」

「ちょっとね…じゃないでしょ」

「疲れて寝ちゃったみたいだね」

大ちゃんは悪びれもなく、肩を持ち上げた笑った

「こんなに土まみれになって…」

あたしは越智君の髪についている土をそっと払った

「授業を真面目に受けないから、教師として罰を与えただけだ。別に僕だけが悪いわけじゃない」

大ちゃんが言い訳をするように口を動かした