「涼宮、好きだよ」

越智君が立っているあたしのウエストに手を回すとぎゅぅっと抱きついた

ちょうど越智君の耳が、あたしの胸にあたった

「涼宮の心臓の音が聞こえる。嬉しいよ。24になっても、涼宮の心臓の音を聞けるなんて。夢みたいだ。今も、夢の中にいるんじゃないかって思う。目が覚めたら、ドイツのホームステイ先の部屋のベッドで寝てる…なんて気にさえなるんだ」

「あたしも。越智君に再会したのは、夢の中の出来事なんじゃないかって思っちゃう。もう会えないんだと思ってたから。忘れようと思えば思うほど、越智君を想ってるって痛感しちゃうの。いまだに大ちゃんの胸に飛び込めないのは、越智君せいよ」

「飛びこまないでいてくれて良かったよ。まあ、飛び込んでいても奪うつもりでいるけど」

あたしは越智君の腕にそっと触れた

越智君があたしから離れると、大人びた顔で幸せそうに微笑んだ

「もう俺から離れないで。何があっても、俺の傍にいて。どうにもならない事態になっても、絶対に俺が涼宮を守るから」

「越智君の熱意には、負けちゃうな」

「俺は、涼宮が隣にいてくれれば、それだけいいんだ」

越智君が椅子から立ち上がると、あたしは越智君の胸に額をつけた

越智君がそっとあたしの肩を抱きしめてくれる

「しばらく会えないからって、岡崎と良い雰囲気になるなよ」

「大ちゃんと? 7年も何もなかったんだから、これからもあるわけないよ」

「俺が嫌なんだよ。高校んときみたいに…岡崎の胸に飛び込む涼宮を見るなんて。家出してホテルに泊まったことがあっただろ? 部屋から出てきたら、涼宮と岡崎が一緒にいて…俺はあそこに割って入ることができなかった。あんな想いはもうしたくない」

越智君が大ちゃんにお辞儀して、フロントに向かっていく後ろ姿をあたしは思い出した

「あたしも越智君と離れたくないよ」