「…たく。勝てない相手に、喧嘩を売るなよなあ」

海東君が、ガシガシと首の後ろを掻いた

「そっちこそ。軽部先生に惚れてるくせに」

「だから…言っただろ。ただ帰りが一緒になったから…って言っても、信じないか。男は勝てない博打をしてもいいんだよ」

「何、それ。意味がわからないんですけど」

「いいから、いいから」

海東君がトントンとあたしの背中を叩いた

「まあ、レイなら平気だろ。子供が嫌いって言ったって、仕事となればきちんとやるだろうし」

海東君が立ち上がった

「レイちゃんを支えてあげて」

「なんで、俺が?」

「だってレイちゃんは……」

「レイの気持ちは知ってるけど。俺から見れば、涼宮とレイはただの看護学校時代の友人であり、同じ職場の同期ってだけ」

海東君が、困った表情をした

「昨日…休憩時間に会ったんでしょ?」

「変なメールがくりゃ…友人として気になるだろ。それだけだよ」

あたしも立ち上げると、「そっか」と答えた

「んじゃ、夜の勤務でな! 主任っ」

あたしはバシッと海東君に背中を叩かれた

「いろいろと教えてよ? あたし、外科での経験しかないから」

「おお…初体験? 俺が優しく教えてあげましょう?」

「ああ、そういう言い方ってなんか嫌だ」

海東君がけらけらと可笑しそうに笑った