「涼宮主任って、研修医の越智先生と同級生なんですか?」

若い看護師が二人、あたしに近づいてくると質問してきた

たぶん、あたしたちの会話を耳をダンボにして聞いていたのだろう

あたしは片手で顔を仰ぎながら、コクンと頷いた

「あ…うん。高校1年のとき同じクラスだったんだ。いやあ、越智君がお医者さんになってるなんて驚きっ」

あたしは「あはは」と笑い出すと、ナースステーションの隅から痛い視線を感じた

『俺が医師になるってずっと知ってたくせに。変な芝居するな』と言わんばかりの越智君の怖いオーラがひしひしと肌に伝わってきた

もう…心臓に悪い

ふと顔をあげると、廊下に立っている軽部先生と目が合った

冷たい視線であたしを睨んでから、足を動かし始めた

第一外科のナースステーションに入ってくると、迷わずに越智君の隣に腰を下ろした

白衣から出てくる綺麗な足を越智君の片足に絡めると、越智君の肩にも軽部先生の手が乗った

「うわっ。いきなり私のモノ宣言って感じ?」

出勤してきたレイちゃんがカウンター越しにあたしに話しかけてきた

「あ。レイちゃん、おはよう」

「何、落ち着いてるのよ。涼宮主任も、あの研修医の隣に行って腕を組んでおいで!」

「え? 嫌だよ。仕事中だもん」

「まだ交代前だから、平気だって」

レイちゃんがあたしの肩をバシバシと叩いてきた

「ねえ、愁。昨日はご馳走様。とっても美味しかったわ」

あたしたちに聞こえるように、軽部先生が大きな声で越智君に話しかけている

越智君は、軽部先生の話が全く届いていないのか…と思ってしまうほどの無反応な態度だった

カルテに目を落としてパラパラとページを捲り、冷たいオーラを全身から放っている