「すでに3つあるじゃない。全然、口つけてないみたいだけど」

「飲んでないよ。それが飲みたい。涼宮主任が持ってるのがいい」

「同じコーヒーだよ」

「同じじゃない。いれてくれた人が違う」

あたしはコーヒーをテーブルの上にもう一度置くと、越智君がすぐに口をつけた

「あちっ」と眉を潜ませながら、ずずっと音をたてて飲んでいる

「今夜、一緒にご飯を食べようよ。仕事が終わったら、メール頂戴。車で俺のマンションに行こ」

「え?」

越智君はまわりで聞き耳をたてている看護師のことも気に留めることもなく、口を開いた

越智君…昨日、あたしが言った言葉を覚えてる?

「外で食事ってあんま好きじゃないんだ。俺が作るからさ」

「あ…いや、そうじゃなくて。もう…嫌だなあ、越智先生ったら。久々に会った同級生で、いくら気心を知った仲だからって」

あたしは必要以上に大きな声で口を開いた

越智君がむすっとした顔をするとぷいっと横を向いた

「越智先生は、料理上手だもんねえ。他の友達たちにも声をかけてみるねえ」

あたしはそう言いながら、立ち上がると越智君のいるテーブルから離れた

あたしはナースステーションのカウンターに手をつくと、「ふう」と息を吐いた

越智君…ここでは、研修医と看護師だって言ったのに

いきなりあたしの血圧をあげないでよ

もう、ドキドキしたじゃない