「あの研修医って出世欲って強いの?」

「どうして?」

あたしは首を捻ると、レイちゃんが口を曲げた

「だってさ。何としても上を目指すっていう出世欲の塊の男って、使えるモノはなんでも使うじゃん。そういうヤツだったら、陽菜はあいつとは付き合わないほうがいいなあって。最終的に女医をくっついて、裏切られて終わるだけだし」

「わかんない。越智君って意志が強くて、こうと決めたら突き進む人だけど。出世欲があるのかどうかって…正直、わからないなあ。ただ、大学病院で身を立てるつもりはないと思うよ。実家が心臓外科の病院だから」

あたしの言葉を聞いて、レイちゃんの目が飛び出そうなくらいに開いた

「ええ? あの研修医ってボンボンなの?」

「まあ…そうなるねえ」

あたしは苦笑いを浮かべた

「陽菜、絶対ゲットよ! あんな女医に負けないで」

レイちゃんの目がつり上がって、あたしの肩をバシッと叩いた

「負けないでって言われても…」

「絶対に、あの研修医と付き合って結婚してやるのよ。んで、女医を鼻で笑ってやるわ」

「レイちゃんが鼻で笑いたいだけじゃない」

「そうよ。笑いたいわよ。だって私は、あの人が嫌いだもーん」

レイちゃんがにこっと笑うと、「おやすみ」と言って部屋に戻って行った

あたしも自分の部屋に入ると、静かにドアを閉めた

暗い部屋で、あたしはふぅっと息をつくとそのままベッドに倒れこんだ

「あたしも…軽部先生には負けたくないかも」

ぼそっと呟くと、あたしは瞼を閉じた

越智君と会えて、すごく嬉しかったよ

今度こそ、越智君と一緒になれたらいいなあ

あたしは瞼の裏で、見てきたばかりの越智君のマンションで同棲する妄想をした