「ここが、俺の住んでるマンション」

地下駐車場に車を停めた越智君が、口を開いた

大学病院から車で15分くらいのところにある新築マンションだった

すごいっ

さすが、大きな病院の息子だけあるよ!

あたしはぽかんと口を開けたまま、車を降りて駐車場を見渡した

まわりに停まっている車はどれも高級車ばかり

越智君の乗っている車も、まわりに停まっている車と大差ない

「越智君、すごい…」

「すごくないよ。就職祝いに親が買ったんだ。俺の金じゃないし」

いや…すごいよ

あたしは今更ながら、越智君との生活レベルの差を感じた

高校生のときは、同じ制服だったし、比べるものなんてなかったから、そんなに気にならなかったけど

こうやって、実生活を目の当たりにすると、『ああ、違うんだな』って目に見えてわかってしまう

着ているスーツも、なんか艶があって高級そうだし、一つ一つが違うよね

越智君は車を降りて、ロックをするとエレベータへと足を向けた

あたしも越智君のあとを追いかける

「13階に俺の部屋があるんだ。引っ越して間もないから家具とか全然ないけど、驚かないでよ」

越智君が恥ずかしそうに笑った

「いつ引っ越してきたの?」

「きちんと住み始めたのは、1週間前かな。マンションを買ってもらったのは3カ月前。大学病院に就職が決まってすぐにここを買ったんだ。少しずつ運び入れたけど、まだ完全ではないよ」

「すごいねえ。一人暮らしをしてるなんて」

「大学生のときも大学の近くでアパートに住んでたけど、今のところは広くて…ちょっとさびしいよね」

越智君がエレベータに乗り込むと、あたしの肩を抱き寄せた