スーツの上に白衣を着ている越智君が、無表情であたしの目の前で足を止めた

「俺、待ち合わせ場所に少し遅れそうだから。先に店に行ってて」

越智君が、不機嫌な声で口を開いた

「あ、うん。どうしたの?」

「外科部長と…ちょっと」

越智君が言い難そうに話す

あたしは頷くと、にっこりと笑う

「わかった。みんなにそう言っておくね」

「越智君、何してるの?」

越智君の背後から、女性の声がした

越智君が振り返ると、そこには軽部先生が立っていた

赤いミニスカートの上に白衣を羽織り、綺麗な足をのぞかせている

真っ赤なルージュの口紅がとても似合う女医だった

「すみません。すぐに行きます」

越智君がペコっと軽部先生に頭をさげると、あたしの頭をポンポンと撫でた

「必ず行くから」

越智君があたしから離れると、軽部先生のほうへと小走りで近づいて行った

「絵になる医師同士で、なんかむかつく」

海東君がぼそっと呟いた

確かに

軽部先生がすごくスタイルも良くて、綺麗系な顔立ちをしてる

越智君の身長が高くて、端正な顔立ちですごく格好良い

美男美女のツーショットは絵になっていて、近寄りがたい雰囲気を醸し出している

「でもなんで救急の先生と、外科の研修医が一緒に歩いてるんだろうね」

あたしがふと疑問に思って首を傾げた

「優秀な研修医なんじゃねえの」

海東君が投げやりな言い方をした

「ま、優秀なんだろうねえ」

越智君は大きな病院を経営している病院長の息子だもん