「正直に?」

「そうだよ。正直に俺に話して」

越智君の声が一段と低くなった

「邪魔なんだけど」

背後から、女性の低い声がした

あたしと越智君が振り返ると、そこには怖い顔をしているしぃちゃんが立っていた

しぃちゃんの両脇には、同じように怖い顔で睨んでいるクラスメートが2人仁王立ちしている

越智君の目がスッと細くなると、口だけが緩んだ

「よくこんなところで、イチャつけるわよね。恥ずかしいとは思わないの?」

しぃちゃんがあたしを睨んだ

あたしはしぃちゃんの目が怖くて、視線を下にした

「しぃには関係ない」

越智君が、あたしの腕を掴んで横に移動しながら口を開いた

「元カノにはすっかり冷たいのねえ」

しぃちゃんの右に立っている女子が、荒々しい声で言い放った

「間違っても、君たちには絶対にしないから。言っている意味…しぃにはわかるよな?」

越智君の言葉に、あたしの肩がびくっと跳ねた

『言っている意味…しぃにはわかるよな?』

『これをあなたにあげるわ……意味、わかるわよね?』

越智君言葉が、越智君のお母さんの言葉と重なった

親子…なんだね

あたしはぎゅっと下唇を噛みしめた

「…かんないよっ」

思ってもみないほうから返事がきたのに、越智君が驚いたようだ

目を丸くして、越智君があたしの横顔を見つめてきた

「涼宮?」

「わかんない! 言っている意味なんて、わかんないよっ」

あたしは、両手を振り上げると越智君の胸を叩いた