「香…」
「孝史!!集合かかったぞ!!」
口を開きかけた孝史の言葉を遮るように、孝史のチームメイトの声が響いた。
「ほら、呼んでるよ。行かなきゃでしょ?」
何か言いたげな表情の孝史の肩をグラウンドの方に押しやった。
「行ってらっしゃい。」
なるべく顔を見ないようにしてあたしは校舎の方に向かった。
目頭が熱くなってきたのを必死にこらえる。
ずっと楽しみにしてた17歳の誕生日。
最近会えなくても、誕生日は…って思ってたんだよ…?
感じる孝史の視線。
今…泣いちゃったら、孝史は抱きしめてくれると思う。
もしかしたら、行かないでくれるかもしれない。
でも、あたしは立ち止まらない…。
そんなこと…出来ない。
二年生の孝史が明後日からの試合に出られるのが、どれだけすごいか、どれだけ楽しみにしてるか、知ってる、から。
帰りが一日伸びて、あたしの誕生日に会えなくなったけど…
応援しなくちゃだよね。
今は無理でも…
明日はきっと……
ずっと名前は呼ばれてるのに、あたしが校舎に入るまで孝史が動いた気配はなかった。
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