…ヤバ……
完全にぼぉっとしてた…
「大丈夫?暑気中りとか?」
「違う違う!んで?高野は千紗とデートまでこじつけたんでしょ?」
「そーそ!なのにあいつ眠れなかったとかで肝心なその日遅刻しやがって!馬鹿だよなー!」
「あははっ!高野も可愛いとこあんねぇー?」
よかった…平気。
話もちゃんとわかってるし。
「っつーかほんと平気?熱とかあんじゃね?」
「へ?ないよ全然」
「マジかよ?だって顔赤いぞ」
瑞樹は怪訝な視線を寄越し
私をじっと覗き見る。
…だから、さぁ。
ねぇ?
誰のせいよ。
「っだってビール飲んでるしー」
誤魔化すのだって限界あるんだよ?
「しおも意地張るからなぁー」
「限界くらいわかるってばもー…」
だからそろそろ
私、ヤバい。
私は缶の縁を指先で弄び
なんとか気を紛らわそうとする。
「ところで」
でも…
「ん?」
「栞ちゃんはどーなのよ?」
瑞樹は私の事なんか露知らず。
そんな事をさらりと尋ねてくる。
「どー、って…」
私は瑞樹に気付かれないよう
小さく溜息を吐いて向き直った。
「…なんもないよ。相変わらず」
「うっそだぁ。なんかしらあるでしょ」
あるよ。目の前に。
だから言えないのに
「はぁー?ないよないない!!」
口にしたら
まるでその存在そのものを否定している様な気がして
なんとなく胸が軋んだ。
「…そ?さっきの溜息、女っぽかったけどなぁ」
「なっ─」
…うぅわ。
瑞樹が妙な事口走るから
私は思わず目を丸くしてしまって
…完全な不意打ち。
ていうかこいつは
こんなに鋭かったっけ…

