まあ、王子というには僕は役不足かもしれないが。

 僕は雅巳の寝顔を見ながら、今までの事を思い返していた。

 初めて出会ったあの瞬間のこと。

再会した後も、どんどん雅巳に惹かれていった。雅巳に好きになっては駄目と言われたことも昨日の事のように思い出せる。

そして、今日のこと。

岩清水医師が言っていた『この子はそんな無茶をするような子じゃない』という言葉。

僕もそう思う。現に僕は雅巳が走っている姿を見た事がない。

歩く時でさえ、そこまで気を遣っている雅巳が、どうして今日に限ってバトミントンの試合に参加しようとしたのか?

考えれば考えるほど、雅巳の気持ちが分からなくなってきた。どうやら雅巳はとても複雑な感情の持ち主らしい。

勿論、そんなところにも惹かれてしまうのだが。

雅巳が目を覚ましたのは、それから二十分ほどしてからの事だった。

「何で……あんな無茶をしたんだ?」

 目を開けた雅巳に責めるような口調で口にした言葉に自分でも驚いた。

 心配だった。

もし雅巳の身に何かあったら、と思うと今でも胸が痛くなるほどに。

「加藤、私の体の事、知っていたんだね……」

 雅巳は、何度も瞬きを繰り返して目を閉じた。