君の声が聞こえる

総体は入学式で使った広い体育館だ。総体ではバトミントンの他に器械体操とバレーボールの授業が行われている。

 体育館に着くと雅巳はもう体育館の方に来ていた。ジャージに着替えた彼女はいつもに増して細く見える。

「加藤、遅かったね」

 笑顔で話し掛けてくる雅巳。雅巳は最近になって僕に自分から話し掛けてくるようになっていた。一緒にいる時間が長くなってきた証拠かもしれない。

 良枝の選択したのは器械体操だった。良枝のほうが器械体操を選んだ理由も明白だ。良枝は意図的に、雅巳の事を避けているのだろう。

「着替えに手間取ってさ」

 僕が下手くそなウィンクで答えると雅巳が肩をすくめた。

「女の子じゃあるまいし、時間なんてかからないでしょ?」

「男女差別だぞぅ」

 僕の言い方がおかしかったのだろう。雅巳は声をあげて笑った。

「変なの」

 笑い過ぎて溜まった目頭の涙を雅巳は拭いた。

「須藤、あのさ……」 

 一言、半田の事を言っておこうと思ったのに、まるでそんな僕を邪魔するかのように、集合の合図の笛が鳴った。

「集まれだってさ。行こう!」