君の声が聞こえる

私が加藤君を好きになっていたのだとすれば、加藤君が想いを寄せる雅巳は私の嫉妬の対象になる。

 でもいつから?

 雅巳と加藤君の仲を邪魔していた頃から?

 それとも、この間、雅巳の事を話し合った時からだろうか?

 いくら考えても答えは見つからない。私の中にある答えはただ一つだけだ。

 私は加藤君が好き。そして、加藤君は私ではなく雅巳が好き。

 ズキン、と胸が痛んだ。私は、その胸の痛みに覚えがあった。

 そうだ。確か食堂でも、こんな胸の痛みに襲われた。あの時には既に私は加藤君の事を好きになっていたのだろうか?

 雅巳の事も友達として好きだ。大切に思っている。

 でも、それと同じくらい加藤君の事も好きだ。加藤君が雅巳の事を好きなのは知っている。それでも諦めたくない。

 雅巳なんていなくなっちゃえばいい。そしたら加藤君は私を見てくれるかもしれない。

 私は自分の考えに背筋が凍ったような気がした。今、私は何て事を考えてしまったんだろう?

私は自分の恐ろしい考えに戦慄を覚えながら固く瞼を閉じた。

 自分が自分でなくなってしまうような、そんな恐ろしい感情が私を支配しつつあった。