君の声が聞こえる

自分のいない隙間に誰が入り込もうと、それは誰のせいでもない。自分のせいだ。

 そこまで考えて、私は違う!と心の中で頭を振った。

 私が傷ついているのは、そんな事ではない。もっと別の事だ。もっと素直に自分の気持ちと向き合ってみろ、と私の中のもう一つの声が告げる。

 私の気持ち?

 最近、雅巳が嫌でたまらなくなった理由。

 雅巳が変わったわけではない。変わったのは私の気持ちの方だ。

「あ……!」

 私はその事に気がついて、小さく声を出してしまった。隣に座っていた男子学生の訝しげな視線が突き刺さる。しかし、そんな事がどうでもよくなるぐらいに私は動揺していた。

 これは……嫉妬だ。

 私は雅巳に対して嫉妬している。でも、どうして?今まで私は雅巳と一緒にいて嫉妬なんてした事はない。

 そうか。そうだったのだ。私が嫉妬したのは雅巳が加藤君と一緒にいる事だ。

 加藤君が雅巳と一緒にいるのを見て、私は雅巳に嫉妬をした。

 答えは一つしかない。

 私は加藤君の事が好きなんだ。

 これで、どうして今まで私が雅巳と一緒にいて訳の分からない苛立ちと焦燥感を覚えていたのか分かった気がする。