加藤君は言ってしまってから『しまった!』という表情をした。本当は私に言うつもりはなかったのだろう。

「加藤君が何で傷つくの?」

 私の問いかけには答えようとせず、加藤君はラーメンの汁までズズズ、と飲んだ。

食べ終わったドンブリを返却口に持っていくために立ち上がる。学食の皿はセルフサービスになっていて、カウンターの脇にある返却口の棚に食べた人が戻すようになっていた。

「とにかく!俺は何も知らないよ」


 加藤君はそれ以上、私に何も話してくれるつもりはないことをはっきりと意思表示した。

 だからって、ここで引き下がったら、何も分からないまま時間だけが過ぎていく事になりかねない。私は思い切って自分の考えを口にする事にした。

「加藤君、もしかして雅巳に告白した?」

「告白?まさか!それ以前の問題だよ」

 加藤君はちょっと怒ったような顔をして私の事を睨みつけた。

私の一言で気が変わったらしく、私と話をするために、もう一度、椅子に腰をおろしてくれた。 

「それ以前って?」

 加藤君は深い溜息をついて目を閉じた。何かに耐えているようにも見える。

「自分の気持ちを伝えたわけではないよ。