たった今、雅巳のお腹から取り出された赤ん坊は本当に小さくてまるで猿のような生き物のように僕の目には映った。

 雅巳が命をかけて守ろうとした僕達の子供。その子供の命でさえ、消えようとしている。

雅巳の命とともに。

 そんな残酷な事があっていいのだろうか?

 僕は絶望的な気持ちで看護婦に抱かれた赤ん坊の小さな体を見つめた。その小さな赤ん坊は泣く事もなく、どう見ても死産だったように見える。

医師の一人が看護婦の元に近付いて何かをしていた。

おそらく、何とか自発呼吸をさせようとしていたのだろう。

 僕は祈るような気持ちで赤ん坊の姿を目で追った。

(頼む、息をしてくれ!)

「先生!患者の心音が……!」

 もう一人の看護婦の声に医師達の間に絶望が広がった。

雅巳も赤ん坊も助からなかった……。

こんなひどい話ってあるか!俺と雅巳が何をしたって言うんだ。僕達はただ静かに普通の生活をしたかっただけだ。

それなのに……。

まるでこの部屋だけの時間が止まったように、重苦しい空気が漂っている。

誰もが悲しい気持ちに苛まれていたんだろう。

しかし、次の瞬間。

「ぎゃあー。ふぎゃー、ぎゃー」