そんな私の気持ちに気付かないのか、雅巳が言葉を続けた。

「私もびっくりした。妊娠周期の数え方が最終生理の始まった日から数えるって事にも驚いたし、赤ちゃんを堕せるのは二十三週までなのも知らなかったわ……」

「……雅巳の体は大丈夫なの?悪阻ってつらいんでしょ?」

「心配してくれるの?ありがとう。でも私は大丈夫。まだ悪阻はないから。もしかしたら私は悪阻が軽くてすむかもしれないわ。そういう人もいるんですって」

 それは絶対に嘘だ。

 思い出されるのは昼間会った時に見た雅巳の血色の悪い顔。もともと色が白い人ではあったが、白いのを通り越して青白い印象が否めなかった。

本当は悪阻に苦しんでいるのではないか?

 そうでなければ、こんなに早くに赤ちゃんの存在に気付く事もないような気がする。

「雅巳、無理はしないでね」

「良枝……」

「私、雅巳の事がすごく大切なの」

 生まれてもいない赤ちゃんのことより、雅巳の事の方が大切だ。もし、雅巳の何かあったら……私は生きてはいけない。本気でそう思った。

「知っているわよ。私は本当に大丈夫!もう寝ましょう」

 雅巳は私に「おやすみなさい」を言ったが、眠れないようだった。