それに夏休みに入っても加藤君を避けていたことを考えても、赤ちゃんは最近になって出来たのだろう。

 詳しい事は分からないけれど、赤ちゃんが出来たばかりの頃って悪阻とかあって苦しんじゃないのかな?

ただでさえ、体が弱い雅巳が悪阻なんて耐えられるんだろうか


 雅巳が心配でたまらない。

「……赤ちゃん、何カ月なの?」

 私の絞り出すようして出した言葉に雅巳は「十週だって」と答えた。

「十週?」

 今、十月の半ばである。単純、計算して雅巳が加藤君と喧嘩していた頃に出来た子供という事になるではないか。私は驚きで絶句した。

「良枝、変な勘違いしてない?妊娠週数って言うのは最終生理の始まった日から数えるのよ」

「え?そうなんだ」

 そうか。その行為があった日から数えるんじゃないんだ。

 ほっとしながら、その行為について考えて頬が熱くなった。良かったと思いながらも、加藤君と雅巳のその行為を想像してしまった。

「出産予定日は五月二日だって」

「そんなに早いの?」

 五月といえばあと六ヵ月半後ではないか!そんなに早いのか。

 予定日を聞いてしまった事で現実味を帯びてくる、事の重大さに私は何も言えなくなってしまった。