それなら私の答えは決まっている。

 雅巳の気持ちが見えた事で、私も冷静さを取り戻せたのかもしれない。

「雅巳、待って!」

 雅巳は私に背中を向けて公園を出ようとしていた。私の声に振り返った正巳の表情は逆行のせいなのか、それとも、いつも被っているつばの広い麦藁帽子のせいなのか影になって見えなかった。

「雅巳、元気な赤ちゃんを産んでよ」

「……良枝?」

「私、雅巳の赤ちゃん抱っこしたい。雅巳と加藤君の子だもん。すごく可愛い子が生まれると思うの。それに、大好きな人達の子だもん。私もすごく楽しみだよ!あ、だからって加藤君の事が好きだとかじゃなくて……友達として二人とも好きだからね!」

 私の言葉に、雅巳が私の元に走ってきた。私は雅巳が走った姿を初めて見たような気がする。走った勢いで、麦藁帽子が風に吹かれて飛んだ。

 しかし、雅巳は飛んだ麦藁帽子の事など気にせずに私を抱きしめた。

「ありがとう。良枝」

 雅巳の肩が小刻みに震えていた。雅巳が泣いていた。雅巳が泣いている姿を見たのも、初めての事だ。今日の雅巳には驚かされてばかりいる。

多分、私が加藤君の事が好きだという事で、雅巳はずっと苦しんできたのだろう。それを思うと、私の心が痛んだ。