子供を生んで育てるなんて事が出来るわけがない！

　混乱しているのに、冷静に機能している部分が現状を分析していた。　

「雅巳、加藤君はその事を知っているの？」

　冷静を装って聞いているのに頭の中はぐちゃぐちゃだ。自分が何を言っているのか、分かっていない。口は動いているものの、それは自分の意思で、と言うよりは何か想像もつかないような力に突き動かされているといった感じだ。

「知らないわ。一番初めに良枝に話したかったから」

「どうして？」

「多分、良枝には一番迷惑をかけることになると思うから……」

「どういう事？」

　私は雅巳が言いたい事が理解できなかった。雅巳に赤ちゃんが出来て、一番迷惑をかける事になるのが私？

　訳が分からなかった。今回ばかりは私の頭の回転が悪いから、と言うよりも雅巳の言っている事の方がおかしいのだ。

　大体、加藤君と雅巳のことではないか。

　確かに、私は雅巳とは親友で、加藤君の事が好きだが、当事者ではない。むしろ第三者というべき人間だ。

「私は赤ちゃんを生みたいと思っている。でも、良枝が反対するなら生まない」

「ええ？」

　私は自分の耳と雅巳の頭を疑った。

　聞き違いだろうか？