ワタシノオナカノナカニアカチャンガイルノ。

 雅巳は間違いなく、そう言った。

 それはどう考えても一つの意味にしかならず、要するに雅巳が妊婦である事を示していた。細い体の雅巳と妊婦が、どうしても私の中では重ねる事が出来ず、これは悪い夢なのかもしれない、という発想さえ生まれてきた。

「誰の子?」

 混乱した頭で分かりきった質問をしているあたり、私の動揺もかなりのものだ。

 そんな私の様子を見て、雅巳は苦笑した。

「加藤と私の子よ」

 私は固唾を飲んだ。雅巳の言葉に私の感情が飛んだ。何も考える事は出来ないし、何も感じる事が出来ない。

 ショックというよりは、これが本当に現実なのかと信じる事が出来ないでいるのだ。

 私はよく人に、雅巳がいなければ何も出来ない、もしくは、突然何をするか分からない、といった評価を受けるが、何もないのに子供ができるわけがない事ぐらいは知っている。 

赤ちゃんはコウノトリが運んでくるわけではない。つまりそれは、雅巳と加藤君の間に赤ちゃんが出来てしまうような行為があったという事だ。

 結婚もしていないのに。

 私達まだ学生なのに。