小さな命

(by・良枝)

 夏休みが明けて、元通りの仲に(もしかしたら、もともとよりも仲良くなっているかもしれない)雅巳と加藤君は、二人とも生き生きしていた。

 ゼミ合宿は二人にとって、とても充実したものだったのだろう。

 私に二人の間に入る隙などないという事を思い知らせたが、決して以前のように嫌な気分にはならなかった。

 何故か今までのような息苦しさを感じる事はなくなっていた。私は本当の意味で加藤君の事を諦める事が出来たのかもしれない。

 雅巳の笑顔が見えなくなるぐらいなら、私は加藤君の方を諦める事の方が容易だということに、やっと気がついたのだ。

私にとって雅巳がどれだけ大切な人か……今さらだけど、身に染みて感じる事ができる。

 雅巳と加藤君は、大学にいる時は今まで変わらず、私と一緒にいる事が多かったが、大学の外でも二人で会っている時間は今まで以上に増えたようだった。

 いつのまにか私はそんな二人を見守っていくのが、自分の義務のように思えていた。季節は秋になり、雅巳のとって一番過ごしやすい季節になっていた。