君の声が聞こえる

「うん。確かに須藤の言うとおりだよ。俺、全然分かっていなかったんだな」

 恋人と過ごす時間が大切。

 そんな簡単な事にどうして今まで気付かなかったんだろう。

 しかも、雅巳は自分の体に明らかに大きな爆弾を抱えている。そんな雅巳を一人にしてバイトばかりに時間を費やすなんて本当はしてはいけなかった。

「これからは私と一緒にいる時間をもっと大切にしてくれる?」

「勿論だよ」

 答えながら、ホッとしていた。どうやら僕は雅巳を失わずにすんだようだ。

 そして僕は、自分と同じように安堵の息を漏らしている雅巳の姿を見付けてしまった。

「どうしたの?」

 僕の問いかけに雅巳は心底、ホッとしたような表情を浮かべてこう言ったのだ。

「私、不安だった。加藤、私の外見だけの事が好きなのかと思って……こうやって、私の気持ちを伝えてぶつかるのが怖かった。何だか私達の関係も駄目になってしまいそうな気がしたの……」

「そんなわけないだろ!」

 今回の事でますます、雅巳に夢中になってしまったなんて事は絶対に言わない。

物欲がなくて、僕が考えていた以上に、僕の事を想ってくれる雅巳は本当に一途で可憐な女の子だった。