君の声が聞こえる

「加藤はバイトばかりで私と過ごす時間を大切にしなくなったでしょ?私はそれが悲しかった。指輪なんていらない。もし加藤が他に何か計画してくれるんだとしたら、それも必要ないわ。私は、ただ加藤と手をつないで、公園に散歩するだけでも幸せだと思えるし、一緒にいられる時間より価値のあるものなんて考え付かないよ」


 雅巳の言葉が僕の心に染み込んだ。

確かに、雅巳の言う通りかもしれない。春休みも、この夏休みも僕は雅巳のためだと思いながら、バイトを入れまくっていた。

 結果、雅巳と過ごす時間は減っている。

 それに、あんなに苦労して手に入れた指輪を誕生日に渡した時でさえ、雅巳は複雑な表情をしていたではないか。

嬉しいけれど心から喜べない。

確かに、あの時の雅巳はそんな表情を浮かべていた。

根が正直な雅巳は、礼を述べながらも戸惑いを隠さなかった。しかも、何か言いかけた雅巳の言葉を僕はふさいでしまったのだ。

どうしてあの時、雅巳の気持ちをもっと考えてやらなかったのだろう。

それが今更になって悔やまれた。

「ごめん……」

 心からの僕の謝罪の言葉に雅巳は、自信なさそうに僕を見た。

「本当に反省している?」