君の声が聞こえる

「そこまでバイトして今度は何をしたいの?」

 雅巳が感情を表に出すのは珍しい事だった。怒ったような拗ねたような表情を顔に浮かべて、そして呆れたような口調で僕に向かってそう言ったのだ。

「何って……?」

 僕には雅巳の心が見えなかった。

雅巳が僕にどんな不満を持っているのかさえ理解できなかったのだ。

ただ、雅巳が怒っているなら僕から謝って仲直りしてしまおう、とそんな簡単にしか思っていなかった。

僕にとって雅巳と離れている時間はとても長くて、切ないものだったから。

「私、加藤に何かして欲しいなんて思っていないよ。指輪をくれたのも、驚いたし、嬉しかったけれど、心からは喜べなかった。どうしてか分かる?」

 僕は雅巳の言葉に首を振った。そんなの分かるわけがない。

大体、女の子とこうやって付き合うのも初めての事だ。女の子は指輪をもらったら嬉しいものじゃないのか?