君の声が聞こえる

雅巳の匂いに包まれて、幸せ気分に浸りながら、僕は抗いようのない眠気に襲われていた。

人は、ホッとすると眠くなるものなのだろうか?

それとも、そんなのは僕だけなのか?

僕は雅巳のベットの上に突っ伏すようにして居眠りを始めてしまったらしい。

誰かに肩をゆすられて気付いた時には、ベットに白い掛け布団に僕のヨダレとおぼしき、シミが広がっていた。

「うわああ」

 驚いて後ろのほうに飛びずさると、白いパジャマを着た雅巳が立っていた。

「何をしているの?」

 ドキン、と胸の鼓動が跳ねた。

思えば、雅巳の秀麗な美貌をこんなに近くで見たのも久し振りなような気がする。

慣れたと思っていたのに、心の準備もなく、見つめられてドキドキしている自分が不甲斐なく感じた。

「雅巳のことを待っていたんだけど……」

「居眠りしながら?」

「いや、つい、うとうとしたのは確かだけど……ごめん」

 何に対しての『ごめん』なのか自分でもわからずに謝っていた。

ただ、分かるのは雅巳が僕を避けている事と、避けるには理由があるはずだということ。

 雅巳が怒るほどの事だ。きっと僕が雅巳に悪い事をしてしまったんだろう、そうとしか考えられなかった。