「あ、花火!」 ちひろは嬉しそうに空を見上げ、 「あー。でもここからじゃ見えないね。」 残念そうに言った。 「歩けそうなら、見える場所に行く?」 今年の夏祭りは例年にないくらいのすごい人出だった。花火を打ち上げている広場に行こうとしたけど、人波にのまれてなかなか進まない。 ちひろは、足もとがおぼつかないので、余計に進みにくい様子だった。 「あ…」 その時、隣にいたはずのちひろが見えなくなった。