「え・・・?」
ちひろは、自分の足を見下ろした。
「鼻緒のところ、血が出てる。」
「あ、ホントだ。痛いなーって思ってたんだよね・・・。履きなれないから、たまに履くといつも痛くなっちゃうんだ。」
ちひろは下駄を脱いで、傷を調べ始めた。
「あー。皮がむけちゃってる・・・。帰り、痛いかなあ。」
下駄とか雪駄とかは、親指と人差し指の間が痛くなる人が多い。履きなれないのもそうだけど、鼻緒が固いのも原因だ。実は、最初に鼻緒の部分を柔らかくしておくと、少し履きやすくなるのだけど、結構知らない人が多い。
ま、普通は、あまり履く機会もないもんな・・・。
「・・・・ちょっと、貸して。」
俺はちひろの下駄を渡してもらい、鼻緒を少し伸ばして柔らかくしてやった。
本当は、指の間のところにバンドエイドか何かを貼ったほうがいいんだけど・・・。そうすると、足を触ることになる。ちひろにとっては、俺は初対面みたいなものだ。初めて会った男に、足を触られるのも嫌だろう。そう思って、下駄を直すだけにした。
