「はあっ、はあっ、はぁああー。」
どれだけ走ったんだろう。この時間は、ほとんどみんな後夜祭に行っていたのだろう、走っている間はほとんど人に会わなかった。暗かったし、すれ違っても誰だか分らなかったかもしれない。
もう走れない、というところまで来た時には、だいぶ外れまで来ていた。
「もう、だめ・・・・はし、れ、ない・・・。」
ちひろは、苦しそうに地面に倒れこんだ。
俺も、息を切らして、ちひろの横に腰を下ろした。
「ごめん、な?俺、気がついたら、攫ってきちまった・・・。」
ちひろは、一瞬間を置いて、ハハハ、と笑った。
「そっか!私、攫われたんだ!・・・でも、王子の格好だし、泥だらけだけどね?」
「ああ。俺も、こんなカッコ。・・・しまらないなあ・・・。」
俺もちひろも、走っている間に汗だく、泥だらけになっていたらしい。
それに、俺は上着も講堂に置いてきてしまっているから、薄着でもあった。
「さみっ!」
風が吹くと、汗が冷えて寒い。ぶるっと体を震わせると、ちひろが、
「あっち、行こうか。建物の近くのほうが風がこなくてあったかいかも。」
と、俺の手を引いた。
